鬼社長の迸る視線に今夜も甘く絆される
俺の作品を着てくれないか?

「部長、カンプチェックお願いします」
「Eファイルに送っといて」
「はーい」

Webデザイナーの近藤(こんどう) (みお) 二十四歳からWebサイトの配色や装飾決めの最終段階であるデザインカンプという作業のチェック依頼を受ける。
Webシステム部にはデザイナー(末端業務)二名、ディレクター(一般業務)二名、SE(総合業務)二名。
そのWebシステム部のスタッフを取り纏めるのが、栞那(SEであり、サーバーエンジニアとネットワークエンジニアとしての技術も凄腕/神技)の合計七名。

これまで幾つかコンペで受賞経験のある栞那は、実力はもちろんのこと人柄もよく、スタッフから慕われている。
的確な指示、細やかな気遣い。
新規立ち上げという部署で右往左往する部下を労わり、自ら末端業務までフォローするその姿勢に、部下の信頼は増す一方。

少し前までシステム関連を外注で済ませていたBellissimoは、栞那が入社したことでWebシステム部を立ち上げた。
お陰で連日のように栞那は仕事に追われ、未だかつてない忙しさに追われている。



山下(やました)くん、もう遅いから上がっていいよ~」
「あっ……すみません、じゃあ、お先に失礼します」
「ん~、お疲れさま」

SEの山下 典人(のりと) 二十七歳に声をかけ、部下を退社させる。
既に二十一時半を回っていて、さすがに独身男性であっても仕事に縛り付けるのは気が引ける。

栞那は静かになった事務所内をぐるりと見回し、フゥ~と溜息を零した。

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