クールな上司は捜し人〜甘愛を運ぶ幼き想い出
【初恋は、ひとときの夏の想い出】
あれは、小学1年の夏休みの遠い記憶。
蝉の鳴く声に、木々から差し込む太陽の光を浴びて、いつも遊んでいた公園。

近所の子供達の中に、突如現れた、年上のこう君。
近所の男の子達とは違う、綺麗な服をいつも着ていた。
ブランコに乗ると背中を押してくれたり、鉄棒を教えてくれたり、優しかった。
大好きになったこう君。
「・・・・・・あっちゃん、これあげる」
何か言ってたけど、記憶が薄れて思い出せない。

泣いていた私の手のひらに、紫色の花がクリアガラスの中に閉じ込められている、キーホルダーを乗せた。
そして私の頭を撫でて、笑顔で手を振るこう君は、その日を最後に公園に来なくなった。

私はキーホルダーを見ながら、遠い記憶を思い出していた。

紫の花の名前は『カキツバタ(杜若)』
花言葉は『幸福は必ず訪れる』

辛いことがあった時は、このキーホルダーを見て、頑張ろうって思える。
幸福は必ず訪れるんだって。
夏のひとときに刻んだ私の初恋。
「わぁっ!もうこんな時間!」
最近1人暮らしを始めて、寒い朝はいつもドタバタして家を出る。
想い出のキーホルダーが付いたキーケースをバッグに入れて、急いで家を出た。
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