クールな上司は捜し人〜甘愛を運ぶ幼き想い出
【愛する事を初めて知る~広大】
税理士の両親を持ち、小学校から帰ると事務所に向かい、母親と一緒に帰って来た日々。
事務所を起ち上げて間もない時、父さんは日付が変わってから帰ってくる事も多く、土日も事務所に行っていた。

高学年になると、1人子の俺は、勉強したり、ゲームしたりして過ごし、母親の帰りを待つか用意された食事を温める。寂しくても、言葉に出さず毎日を過ごした。
そして、小学6年の夏。何の前触れもなく、その日を迎えた。
「ごめんね」母親は俺に背中を向けて、家を出た。

それからは、家に帰り、1人で夕食を食べて寝る、そんな日々を過ごした。
中学では部活にも入らず、暇だからと塾に通い、お陰で成績はいつもトップ。
そして、名の知れた高校に入学した頃に、母親が家を出た理由を知った。

事務所を起ち上げた時から、一緒に勤めていた税理士と、浮気をして出て行ったと。
俺が寂しい思いをしていた間に、他の男に寂しさを癒やしてもらっていた。
それも、父さんの仲間と・・・

あんなに仲が良かった両親。俺に優しかった母親。でもそれは偽りの笑顔。
俺は、心から人を信じることが出来なくなった。

高校の時、街を歩いても声を掛けられ、それなりにモテた。
「付き合って欲しい」と言われると、「いいよ」と言って、付き合った。
体の関係を求められると、それに応える。
そして、しばらくすると「一緒にいるのに寂しい」「抱かれても愛を感じない」そういう理由で別れを切り出されていた。
何人と付き合って、何人と関係を持っただろう。
「いつも違う彼女、連れてるね」
事務所の人にそんな事言われたな・・・
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