閉店してからやって来る、お菓子の好きな騎士さんは

「こっ、こちらのクッキーですね! すみませんっ、ただいまお包みいたしますっ!」

 騎士さんは背の高い、すらっとした方でした。
 詰襟の騎士服がとてもよくお似合いでした。
 私より年上の……まだ三十はいってないかな、二十四、五歳くらいの方でしょうか?

 プラチナブロンドの髪に、ルビーのような赤い瞳。
 無表情だけど凛とした、湖畔の水面のような静謐な印象の方。
 きっとモテるんだろうなあと、人ごとながら思います。

「注文を付けて悪いが、リボンをつけて飾り紙に包んでもらえないだろうか……贈呈用、なので」

 なんだかおずおずと申し訳なさそうな様子で、騎士さんは私に言いました。

「かしこまりました。それでは1890タラントになります。お包み代はサービスいたします」

 気を取り直して私は営業スマイルを作ります。
 包装と会計を済ませた後、そのクッキーを手渡しました。
 
「どうもありがとう」

「いいえ、こちらこそお買い上げありがとうございました。またのお越しをお待ちしております」

 その時は、珍しいお客さんだなって、その程度の感想だったんですけど。でも。


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