閉店してからやって来る、お菓子の好きな騎士さんは

「……ん?」

 でも、よく考えたら、おかしいんですよね。
 贈呈用として買われたクッキーなのに、自分で食べたってどういうことなんでしょう。
 言葉の矛盾もなんですけど、それに加えて騎士さんの態度も、どうも不審なように思えたんですよ。

 というのはその騎士さん、クッキーを選びながらショーウィンドウの方をちらちら見られてたんですよね。

 その日売れ残ったケーキのショーウィンドウ。
 残り一個か二個になったお盆を――というか、残ったケーキを眺めつつ、後ろ髪引かれるようにお店を出て行かれたんです。

 それで私、ちょっとピンときちゃったんです。

 わかります? どういうことか。

 わざわざ贈呈用って言ったり、閉店後に来たり、ちょっと恥ずかしそうにしたり。

 つまりですね、あの騎士さんはケーキを買うのが恥ずかしいんですよ。
 大の男が甘いものを好むって、そういうことを知られたくないんでしょうね。
 
 ふふふ……なかなか名推理だと思いません?

 まあ、何にしても、売る方はそんなこと全然気にしませんから。
 むしろ「おいしい」って思ってくれて、そっちの方が重要ですよ。
 そう思ってもらえることこそ、何より嬉しいんです。

 だから私、次に騎士さんが来られた時のために、いくつかケーキをとっておくことにしたんです。
 一番自信のあるケーキ、食べてみてほしかったから。

 それで、まあ。


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