幼なじみのハイスペ若頭が結婚を諦めてくれません。
悠生は獅子のように那桜を睨み付け、那桜の前に立った。
「染井那桜、俺と勝負しろ」
なっ、悠生!?
その場にいた全員がざわつく。
「テメェが勝ったら認めてやる。でも俺が勝ったらお嬢には二度と近づくな。
組長にもテメェのこと話す」
「……わかりました」
えぇーーーー!?
勝負するって、どういうこと!?
「ちょっと二人とも……!」
「止めても無駄ですぜ、お嬢。悠生のやつ、なんか思うことあるんだろう」
「男にはやらなきゃならねぇ時があるんですよ」
えぇーーーー……、そんな……。
その日の午後からうちの稽古場で那桜と悠生が勝負することが決まってしまった。
なんか他のみんなもやけに乗り気になっちゃって、今から稽古場を綺麗に整えている。
「那桜、本気でやるの?」
「当たり前でしょう」
「……なんか顔赤くない?」
那桜は顔が赤いだけじゃなく、ちょっと目も潤んでる。もしかしてと思って額を触ってみたら、熱かった。
「あつっ!!もしかして熱ある?」
「ないです」
「絶対あるじゃん!やっぱりやめて……」
「やります」
那桜はピシャッと言い切った。
「絶対誰にも言うなよ?」
「っ、那桜……」
「この件に関しては、口出ししないでください」
そんなこと言われても、ふらついてるじゃん……。
那桜ってば、そんなに意地張らなくてもいいのに。
不安を抱えたまま、時間だけが過ぎていった。