幼なじみのハイスペ若頭が結婚を諦めてくれません。


 那桜の側近・大山さんが私たちの姿を見て驚愕する。


「若!!何故桜花の娘と一緒にいるんですか!?」

「え、ウチで修行を」

「桜花で修行!?」


 あれ、もしかして那桜、ウチで見習いやってたこと言ってない……?


「何だか事情がわかりませんが、ひとまず若を連れて来てくださったことに礼は言いましょう」


 私から那桜を引き取った大山さんは、言葉とは裏腹に視線はとても冷たかった。


「あとはこちらに任せて、あなたはお引き取りください」

「あ、はい……」

「迎えが必要なら車を出しますが」

「大丈夫です。組の者を待たせてますから」

「そうですか。ではお気をつけて」


 まるでピシャッとシャッターを下ろされたような、そんな感覚だった。

 いやでも、あの人の反応が普通なんだよね。
 桜花と染井は敵同士なんだから。


「那桜、お大事にね……」


 とにかく今は那桜の無事を祈りながら、私も車へと戻って行った。


 私はまだ気づいていなかった。
 これが本当の波乱の序章に過ぎなかったこと。

 私たちの恋が、二つの組を巻き込んだ大波乱を巻き起こすことになるなんて――。


< 110 / 176 >

この作品をシェア

pagetop