幼なじみのハイスペ若頭が結婚を諦めてくれません。


「染井がなんですって!?!?」


 どこから湧いて出たのか、私たちが朝食を食べている部屋に一斉に組員たちが血相を変えて集まる。
 討ち入りに向かうかの如く殺気立っており、私は大慌てで否定した。


「違う!!なんでもないから!!」

「でも今、染井と手を組むって」

「あり得ない!!染井と手を組むなんて馬鹿げてる!那桜は私の天敵よ!!」


 食事中に立ち上がって大声を上げてしまった。
 しばらく静まり返った後、何故か拍手が湧き起こる。


「流石は俺たちのお嬢だ!!」
「お嬢!どこまでもついて行きます!いつか染井をぶっ潰しましょう!!」
「え、あ、うん」
「あの染井一家の若僧め、覚悟しとけ!!」


 なんか不用意に士気を高めてしまったな……。
 この大騒ぎの中、静かに朝食を食べている八重の図太さがすごい。
 流石は警視総監の娘ってところかな。

 とにかくこれで再認識できたけど、やっぱり那桜と結婚なんてあり得ない。


「那桜め!私を油断させようったってそうはいかないんだから!!」


 私をバカにするのもいい加減にしなさい。
 いつまでも負けっぱなしの万年2位じゃないんだからね……!!

 自分で言ってて虚しいけど!!



「……こうも鈍感すぎると、那桜さんも苦労しますわね」



 ぼそりと呟いた八重の言葉は、私の耳に届くはずもなかった。


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