幼なじみのハイスペ若頭が結婚を諦めてくれません。


 私はパパに押さえ込まれてしまった。
 それでも身をよじらせて手を伸ばすけど、もう那桜は車の中に入れられてしまっていた。


「那桜ーーっ!!」


 私の叫び声だけが虚しく響く。

 そのまま車は発車してしまった。
 那桜を乗せた車が走り去るのに続き、他の車も一斉に発車する。


「なんで……っ」


 それが私が見た那桜の最後の姿だった。

 この日から夏休みが終わっても、那桜と会うことも連絡を取ることもできなかった。

 2学期が始まっても、那桜は学校に来なかった。


「ねー那桜くんどうしたの?」
「先生が家庭の事情だって言ってたけど」
「那桜くんに会えないなんてつまんない〜」


 クラスメイトたちが言うように、私もつまらないし何より寂しくてたまらない。

 那桜ならどうにかして連絡くれると思っていたのに、何もない。
 ちなみにスマホは何とか返してもらっていた。でも、電話も繋がらないしメッセージも既読にならない。


「那桜さん、今頃どうしているのでしょうか……」


 八重ですら音信不通だった。


「お父様もご存知ないようですの。無事だと良いのですけれど」

「……っ」

「鏡花……!」


 情けないけど、今の私にはどうすることもできない。
 ただ信じて待つしかなくて、それがつらくて仕方ない。


「泣かないでくださいませ」

「だって……っ」


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