幼なじみのハイスペ若頭が結婚を諦めてくれません。


 声をかけようとしたら、私より先に那桜に声をかけている子がいた。
 思わず廊下の曲がり角に隠れてしまう。いや、なんでかわからないけど咄嗟に隠れてしまった。

 チラ見してみれば、やたらとかわいい女の子がもじもじしながら那桜と向かい合っている。
 先輩って呼んでたから、多分後輩だよね?


「あの、あたし染井先輩のことずっと好きで……ずっと憧れてたんですっ!」


 こ、これは、告白ってやつですか……?


「もしよかったら、あたしと付き合っていただけませんか!?」


 うそ、本当に告白だった。
 しかもあの子、見れば見る程かわいくない?健気で一生懸命で、あんな風に告白されたら誰でもクラッときちゃうんじゃないの?

 チクン。
 あれ、今のは何……?


「悪いけど、君とは付き合えない」


 那桜の声だ。


「俺の家のこと知らない?君みたいな子は関わらない方がいいよ」


 それはまあ、そうだろうなと思った。
 桜花も染井も警察公認の極道であることは、世間一般的には秘密。
 一般人からしたらただの極道と変わりはない。


「それでもっ、染井先輩のことが好きなんです……!あたしじゃダメですか?」


 うわあ。潤んだ瞳に上目遣いのダブルパンチ!
 これでオチない男っているの?那桜はどうかわからないけど。


「――ごめん。他に好きな人がいる」


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