相思相愛・夫婦の日常~カケ♡サト編~
悪魔と呼ばれた翔琉と翔琉の世界を一変させた里海の出逢い
“井澤 翔琉”と言えば、一部では知らない者がいない有名人だった━━━━━━━


井澤財閥の御曹司で眉目秀麗、文武両道。
破壊的な力の強さを持つ、まさにハイスペックな男。

しかし翔琉は、幼い頃から人生に絶望していた。


一人息子の翔琉は、両親からの期待を一身に受けて育った。
他の大人からも媚を売られ、翔琉の美しさに言い寄ってくる女も少なくはなかった。

なんでも器用にこなす翔琉は、努力なんか必要なかった。
だから“頑張って、目標を達成する”なんてことも皆無。
女もちょっと翔琉が優しくすれば、簡単に寄ってくる。


翔琉にとって次第にそれは━━━━生きる意味も失わせていった。

そして、心はすさんでいく。

そんな中。
伯父だけは翔琉の空しさと孤独を理解してくれていて、いつも寄り添ってくれていた。

伯父も厳格だった、父親(翔琉の祖父)に反抗していた。
だから、翔琉の気持ちがよくわかるのだ。
かなりのワルだったのもあり、翔琉に喧嘩をおしえたのも伯父だ。
まるで才能のように、伯父が教えることを吸収していく翔琉。
あっという間に、強くなっていった。


高校に入学して、二週間程経った時。

当時、高校内で最強と言われていた三年の先輩に突然、喧嘩を売られた。

『お前が、井澤?』

『うん』

『お前、俺の女に手ぇ出すんじゃねぇよ!?』

『は?手、出してないよ』

『は?袴田(はかまだ) ミエだよ!』

『袴田?
……………あー、この前告白された。
でも、断ったよ?
僕、あんなケバい人、嫌いなんだ。
僕はもっと、清らかな人がいい』

『は?てめぇ…バカにしてんの?』

『バカになんかしてない。
てゆうか、相手にしてない』

『てめぇ……!!!?』

殴りかかってきた先輩を、軽くかわす。
何度も殴りかかって来るが、翔琉からすれば凄くもなんともない。

何度もかわし、段々飽きてくる。

『ねぇ、もういい?
なんだか、飽きた』

そう言うと、先輩を一発殴った。

そのたった一発で、先輩は倒れてしまったのだ。


その日を境に、翔琉のことは一気に広がる。

“あの最強の男を、たった一発でひれ伏させた”と。

そしてほぼ毎日のように、色んな不良達に喧嘩を売られるようになる。
その人達も、簡単に返り討ちする。

そんな中━━━━出会ったのが、幸生、雷武、秀弥だ。
何故かウマが合って一緒に過ごすようになると、空っぽだった心が少し埋まるようになった。

喧嘩三昧な日々。
相手は、必ず年上。

翔琉は相手が大人であれば、誰にでも喧嘩をふっかけてきた。
そして、強そうであればある程…心が燃えた。

翔琉にとって“大人”は、翔琉から“生きる意味”を奪った人間だからだ。

楽しかった。
とにかく、殴っている時が爽快だった。

しかしそれも、一時のこと。
次第にまた、心に隙間があいていく。


どうすれば、このすさんだ何もない心は満たされるんだろう。

僕の生きる意味は、何処にあるんだろう。と━━━━━
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