冷酷御曹司の〈運命の番〉はお断りです
 逆に腕を取られ、強引にソファに座らされる。腕は社長に掴まれたままで、立ちあがろうとしても体はピクリとも動かなかった。

 隣に座った社長が、静かに顔を近寄せてくる。
 真剣に研ぎ澄まされた目つきで私を凝視し、薄い唇を動かす。

「俺は俺のためにお前が必要だ。運命でも何でも利用させてもらう」
「待ってください、抑制剤効いてます?」

 言ったが、社長が全く理性的な事は分かっていた。背筋に冷たいものが走る。

 完全に理知に支配された思考で、この人は私を運命の番にしようとしている。
 どこまでも冷静に、冷酷に。そんな相手からどうやって逃げればいい?

 とん、と肩を押され、私の体は呆気なくソファに倒れた。

 社長が私に覆い被さる。
 両腕が私の頭の横に突かれ、逃げ場はどこにも見当たらなかった。

「あと五分で抑制剤が切れる。そうしたら俺はおそらくヒートに陥る。その時、雨宮は俺の頸を噛んでくれ」
「だから嫌だと……」

 社長がそっと、私の唇を撫でた。

「頼む、番が成立したら、すぐに解除してくれていい」

 予想外の言葉に、瞬時、息が止まった。

「――は?」

 ぽかんと口を開ける私に、社長は当然のように続ける。
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