冷酷御曹司の〈運命の番〉はお断りです
「社長もわざわざ? 律儀ですね……」
「雨宮のご家族に会うということだろう。当たり前だ」
生真面目な口ぶりだった。グレーのジャケットの襟を整えながら、じろりと私を見下ろす。
「あと、そういう事なら社長呼びは止めてくれ。俺は社員の墓参りに付き合うわけではない」
「社員の墓参りにしたら、花代が経費で落ちませんか?」
「茉優、遊びが過ぎるぞ」
本気で睨まれた。私は腰に手を当ててため息をつく。
今日は言っていい事と悪い事の区別が上手くつけられない。たぶんいつもの精神状態ではないのだろう。こういう時は余計な事を言わないに限る。
「了解です、柾さん」
「…………」
なぜか反応がないので、私は社長――柾さんに目をやる。
と、彼は目を見張って私を凝視していた。目元がじわじわと赤く染まっている。
「な、何ですか」
「苗字呼びの前置きが入ると思ったんだが」
「そういうの、今日はなしです」
「そうか……そうか」
しみじみと何かを噛み締めている。
私は首を傾げながら、その袖を引いて歩き始めた。
「雨宮のご家族に会うということだろう。当たり前だ」
生真面目な口ぶりだった。グレーのジャケットの襟を整えながら、じろりと私を見下ろす。
「あと、そういう事なら社長呼びは止めてくれ。俺は社員の墓参りに付き合うわけではない」
「社員の墓参りにしたら、花代が経費で落ちませんか?」
「茉優、遊びが過ぎるぞ」
本気で睨まれた。私は腰に手を当ててため息をつく。
今日は言っていい事と悪い事の区別が上手くつけられない。たぶんいつもの精神状態ではないのだろう。こういう時は余計な事を言わないに限る。
「了解です、柾さん」
「…………」
なぜか反応がないので、私は社長――柾さんに目をやる。
と、彼は目を見張って私を凝視していた。目元がじわじわと赤く染まっている。
「な、何ですか」
「苗字呼びの前置きが入ると思ったんだが」
「そういうの、今日はなしです」
「そうか……そうか」
しみじみと何かを噛み締めている。
私は首を傾げながら、その袖を引いて歩き始めた。