妖しく微笑むヴァンパイア



 一方、直前のペア変更には由良も気になっていて、
 一階に到着した時にそれとなく尋ねてみた。



「ペア変更って璃斗くんが言い出したの?」
「あー、うん」
「ど、どうして?」



 決して期待はしない。
 そう思ってはいるものの、もしも特別な理由があるなら知りたいと思った由良。

 すると、少し沈黙したのち璃斗が自信なさげな小さい声で答える。



「ほら、前に由良ちゃんの気になる出店の話したじゃん?」
「え……?」
「でも後輩と一緒じゃ、やっぱり我慢しそうだから」



 先月、帰り道で会話した内容を思い出した由良。

 出店の一覧表に気になる食べ物の出店を見つけていたけれど、
 生徒会長が見回り中に食べるなんて示しがつかないと、とっくに諦めていたのに。

 わざわざペア変更をしてまで実現しようとしてくれる璃斗に、ドクンと胸が高鳴った。


 そもそも、何気ない会話のはずだったのに、
 覚えていて、気にしてくれていて、叶えてくれようとしていたなんて。



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