妖しく微笑むヴァンパイア
06. 妖しく微笑むヴァンパイア



 あの地震から一週間が経過した、放課後の生徒会室。

 一年生の書記さんと会計くんが、
 神妙な面持ちでノートパソコンを使い書類作成していた。

 そして空席の副会長デスクを沈黙したまま眺める由良もまた、
 ホッチキスで書類を留める作業を繰り返す。



「先週の地震、被害が大きくなくて良かったですよね」
「建物の崩壊も火事もなかったし、人的被害も……あっ!」



 しまった!というような表情をした会計くんの肩を、
 隣に座る書記さんがバシンと叩いた。

 しかし、由良は微動だにせず作業を続けているので、
 二人は少しだけホッとする。


 そもそも二人の会話は、考え事をしている由良の耳には届いていなかった。


 あの日。
 あの地震の日の出来事を毎日思い出すし、
 思い出す度に不安で胸が押しつぶされそうになる。



(ヴァンパイアらしいことしたの、生まれて初めてだった)



 自分がヴァンパイアの末裔であることを忘れるくらいに、
 十六年間、平穏に過ごしていたから。



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