嘘と恋

一度だけ彼と言葉を交わした事がある

気分が悪くなってうずくまっているお年寄りを見かけどうしたものかと背中をさすっていた時

スッとハンカチとペットボトルを差し出してくれたのが彼だった

「駅の救護室に行きましょうか」

低くて優しい声だった

私は何もできず
ただ後ろをついて歩いた
おばあさんの荷物を持って

「すごいね」

つい本音が口をついて出た

「何が?君こそすごいね。最初に気づいてあげて」

そう言って笑ってくれた

低くて優しい声
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