ヒートフルーツ【特別編集版第1部】/リアル80’S青春群像ストーリー♪
終われない夏の日/その28
アキラ



ひと通りの話が一段落すると、剣崎さんは何やら手にして、テーブルに置いた

「これは、こっちサイドから今回の分の代償だ。それに、この二つは俺個人から、君とケイコへの気持ちになる。まとめて君に渡すよ」

俺の前に置かれたのは、封筒が三つだった

一つはかなり分厚い…、おそらく100万円以上だろう

「前回は遠慮がちだったが、とにかく受取っとけ。君もこれから、大変だろう。アパートの前のポストには、請求書が溢れていたぞ。それ、ケイコも気付いたと思うしな」

オレは思わず、”えっ?”という顔つきをしてたと思う

剣崎さんはそれを感じ取って、少し笑いながら話を続けた

「アイツ、たぶん君の部屋を確かめに、アパートへ行ってるよ。君が帰ってないのを承知でな。君の住所を電話で伝えたら、その場でメモしてたようだが、子供みたいに浮かれてる感じで、こっちに伝わってな(笑)」

そして、少し間をおいてこう言った

「アキラ、これを機会に現実的になれ、もっと」

「・・・。では、いただいときます。すいません。ケイコの分も会ったら渡しときます。」

オレは封筒三つを受けとった

厳密には、犯罪の”協力金”だ、これ

当然、口止め料とかも含まれてるし、きれいなお金じゃない

だが、今はカッコつけてる時じゃない、割り切ろう…


...



それにしても、いろいろ話聞かされて、改めて驚いた

建田さんのところ、壊滅状態じゃないか

しかも、こんな短期間で…

こういう世界だってわかってはいるが、今までの経緯があるからショックだ、実際

建田さんはすべてを失って、刑務所の中だし、間宮さんは魂を売って自首で、北原さんも破門か…

そして、あの浅田さんは、もうこの世の人ではないと…

自殺だと剣崎さんは事務的に言っていたが、違うだろう…

オレは口を出す立場じゃないが、ある程度は裏事情が見えるし、なんか言いようのない、嫌な気分になる

オレのここ数年間では、この人達がかなり重要な存在だったのは事実だ

いろんな意味でだが…

”マッド・ハウス”で出会った人の多くは、この夏、人生が大きく変わった

マッド・ハウス…、直訳すれば”狂気の家”か…



...




まず、あさって病院で、麻衣とははっきり終わりにしてくる

それでオレもケイコちゃんも、麻衣のことはきっぱり忘れないと

相和会はこれからも麻衣には、気を抜かないだろう

何もしなければそれまでだが、今までを考えると、何を起こしても不思議じゃない

その前に、オレたち二人は金輪際、”駒”にならないことを麻衣に宣言するんだ

そして、麻衣自身にもしっかり了解させる

それが終われば、ケイコちゃんとも、やっと会える

いろんな話をしなくちゃ、二人で

なにしろ、大阪に向かう日、「行ってくるね」と離れて以来、それっきりなんだ

あのあと、あの子が一人でどんなに苦しんだか…

クソッ、もういい加減に、この夏を終わりしないと…







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