幽霊と執事

跡取りの謎

「叶！時間に遅れちゃう！！遅れるとお父様許さない！！」
「急ぎましょう。羽衣様。」

叶は本当に優秀な執事だ。ミスターコングランプリを獲得し、芸能事務所からスカウトの絶えない顔立ち。IQ130の頭の良さ。月陰家に代々伝わる霊感に、人の心を読む特殊能力。この私の隣にいても恥じない人間だ。

「は〜、間に合った、。今日は私たちだけ？」
「いえ。花憐様も呼ばれているでしょう。」
「花憐も？にしては花憐遅くない？」

花憐。有栖花憐（ありすかれん）私の姉だ。花憐は自分に自信がある。クォーターで天才と称される私に勝るはずないのに、なんでも自分が一番だと思っている。花憐はどうしようもなく馬鹿だ。地頭が本当に悪いのだ。

「羽衣。叶。早いなぁ。」
「お父様。こんにちは。」
「さて、花憐が来ないぞ？叶、なにか知っているか？」
「いえ。兄から遅れるという連絡は一切伺っておりません。」
「そうか、わかった。」

もう五分以上も遅れている。花憐にしてはとてつもなく遅い。叶の兄で花憐の執事の月陰望（つきかげのぞむ）は叶には劣るが優秀な執事だ。時間を間違えるという致命的な失敗、するはずがない。
だとしたら？意図的に遅れている？いや、考えすぎか、。

「遅れてしまって申し訳ありません！」
「遅いぞ。有栖を名乗っているんだからちゃんとしなさい。」
「はい。申し訳ありません。」

時間に厳しいで有名な有栖家当主の私のお父様。そのお父様が遅れてきた花憐を怒らなかった。明らかにおかしい。
私は叶を見た。無表情。今、叶は何を考えているのだろう。
叶と一緒に考えるから私は事件を解決できるほどの洞察力と頭の回転さを存分に発揮できるのだ。叶が一緒に考えてくれないと......。おかしさは十分に感じ取れたのに何がおかしいのかがわからない。

「有栖家次期当主が決定した。」