卒業式の告白を叶えたい元教え子に、こじらせ先生は溺愛される~再会は深愛の始まり
「聞いたよ。結婚して辞めたって。あの携帯の待ち受けの彼氏?良かったね。おめでとう」
やっぱり、北見くんも知ってるんだ。
でも、嘘ついても仕方ないし・・・
「あぁ、うん、その事なんだけどね・・・結婚、しなかったんだ」
「えっ?」
「色々あってね」
ようやく忘れかけた触れたくない過去に、胸が痛む。
それ以上、聞かないで。
「北見くん、ごめん。お客さん来たから行くね。ゆっくりしていってね」
北見くんには、あの頃の純粋な私のままの記憶でいて欲しい。

北見くんは、食事を済ませた後、カウンターに行って、美和に声を掛けていた。
話が終わったみたいで、
「奈菜、北見さん帰るって言うから、玄関先まで送ってよ」
「う、うん」
美和に言われて、北見くんと外に出た。
「北見くん。元気そうで良かった」
楽しかった記憶が、蘇って来た。
「先生も。元気そうで安心したよ」
あの頃と変わらない北見くんの笑顔だけど、大人の男性を感じる。
「ねぇ先生、今は独身?」
「ははっ、そ、そうなのよ」
「そう・・・じゃあ、彼氏は?」
「いないよ。色々あって、男性を信じられなくなっちゃって」
「へぇ・・・そうなんだ・・・」
北見くんは、しばらく黙って、
「じゃあ、俺、そろそろ会社に戻るから」
隣の駐車場に止めていた車に乗って動き出すと、私の前で止まり、北見くんは窓を開けて、
「また来るよ。奈菜先生」
笑顔でそう言って、帰って行った。
「今、奈菜先生って・・・」
私は車が見えなくなるまで、呆然としていた。

店に戻ると、美和が近づいてきた。
「さっきの人、美和の元教え子で、いつも話してた北見くんだよね」
「そうだよ。ねぇ美和。北見くん、何しに来たの?」
「あぁ、まだ小さい会社らしいけど、コンサルタント会社の社長みたいよ、彼」
「北見くんが?」
人を引っ張る力と統率力、行動力、判断力。
あの若さで社長でも納得言った。
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