過去の名君は仮初の王に暴かれる
「ああ……、ろれしお、さま……っ!」
圧倒的な快感と、自らの空白を満たしたいという欲望が、エルゼの理性を凌駕する。敏感な場所を刺激されるたびに腰が跳ね、隘路の奥にある場所が待ちわびるようにズクズクと疼きだす。
ロレシオは額にかかった前髪をかきあげて、乱れるエルゼを見た。
「……もう少し、こうしていたいが、私も限界だ」
「あっ……」
刹那、エルゼの内部に熱い楔が侵入する。ずり、ずり、とゆっくりロレシオは己の剛直をエルゼの中に沈ませる。待ち望んでいた快感をついに与えられたエルゼは、シーツをぎゅっと握りしめた。
初夜のような異物感や痛みはないが、やはり内臓を押されるような圧迫感はある。しかし、今はただ、ロレシオとようやく一つに慣れたことが嬉しかった。
エルゼは潤んだサファイアブルーの瞳をふっと細めた。
「ろれしお、さま……。わたくし、……しあわせです」
「エルゼ、私たちは夫婦なのだ。ロレシオ、と呼び捨てにしてくれないか」
「……ロレシオ?」
「そうだ。陛下、と呼ぶのも辞めてほしい。他人のように仰々しく私を呼ばないでくれ。私たちはもう、夫婦なのだから」
「夫婦……」
エルゼの胸の中が、春風が吹き抜けたようにほわりと温かくなる。ロレシオもまた、この上なく嬉しそうに微笑み、エルゼを抱きしめる。
「愛している。こんなにも私を満たすことができるのは、君だけしかいない――」