ワインとチーズとバレエと教授【番外編】

3


ギブスは取れたが
川村コーチに見捨てられたと
感じる理緒は、すっかり
気落ちしていた。

またリンクのベンチで
大粒の涙を流していた
川村コーチの
悲しげな顔も頭をよぎる。

それでも成績を
落とすわけにはいかない。

せっかく SPコースに入り
大学進学を目指すのだから
こんな気持ちではいてはいけないー

理緒は気を引き締めた。
ギブスが取れて2週間後
担任教師の朝倉先生が
理緒を職員室に呼んだ。

朝倉先生は理緒が
成績優秀で、素直であることや
生徒会もやっており
フィギュアスケートの
大会での事故も知っており
「加納さん」から「理緒」と
呼ぶようになっていた。

理緒は職員室をノックして入ると
朝倉先生が「こっちこっち」と
手招きした。

「先生、なんでしょうか?」と

理緒が尋ねると
朝倉は先生は

「フィギュアスケートは
大変残念だったね
気落ちしているようだけど
その後、足はどう?」

「はい、すっかり良くなってます」

理緒は笑って見せた。

「…それでなんだけど
川村先生がねOGとして
理緒をダメにしたのは私だとー
理緒が膝が悪い、どこかで
分かっていたのに、それを放置し
大会に出場させたことを
申し訳ないと先生に電話があってね…」

「え?じゃあ川村先生は
私の足の脱臼に
気づいていたということでしょうか?」

「おそらく、
気づいていたのでしょうね
それで理緒には芸術的な
才能があるしやる、
気もあるのだから
紹介したい人がいると」

「どなたでしょう?」

とリオが聞くと
朝倉先生は、紙を渡してきた。

それは有名なバイオリン教室だった。
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