君の隣に居たいから。


朝、一通のメッセージで目を覚ます。


それは僕の大好きな彼女から、海に行くお誘いだった。
もちろん断る理由はないため、着替えてご飯も食べず集合場所へ向かう。


蝉の声がうるさい。耳にずっと煩わしくまとわりついてくる。


ガードレールに映る自分の姿すらも鬱陶しく感じてしまうほど、世界は今日も美しかった。


ーこんな日々は、いつまで続くのだろうー


「やっほー、遅いよまったく!」


「ごめんごめん」


そうふざけて僕のことを叱る彼女。
今日はなんだか、儚い雰囲気をまとっていた。歩きながら、たわいも無い会話を交わしすぐ海辺にだどり着く。


長くて、茶色い綺麗な髪が風に揺られて踊っている。
振り返った瞳には、僕だけが映っていた。


彼女はとても美しかった。世界に負けない程。


「ねぇ、今から海に入ろうよ」


もちろん彼女の言いたいことは分かっていた。
海に入りたい。これから一緒に沈みたい。
これは彼女なりのSOSなのだろう。


「あぁ、いいよ」


「断らないんだ」


「もちろん、断る理由なんてないよ」


僕は彼女が投げかける質問にそう答えた。


手を取り合って、段々と水に浸かっていく。


やがて首まで水が来た頃、彼女は「ありがとう」とそう一言だけを残して僕とともに水の中へと帰っていく。


溺死はこんなにも苦しいのか。


こんな思いをさせてまで彼女を死なせたくない。
ただ、そんな思いだけを僕は残して意識を失った。



















ピロンッ。


僕は一通ののメッセージで目を覚ます。


僕は今日もおかしな夢を見てしまった。ここ最近、最悪な夢ばかり見てしまう。


深く考えるのはやめよう。


そう言ってメッセージをみる。


ーそれは僕の大好きな彼女からのお誘いー


内容は、海に行かないかというものだった。


あの夢と同じだ。


僕は彼女に、


今日は、僕の家で君の話を聞かせてよ。


そう言って、君と約束をした。
















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