成長した年下王子は逃げたい年上妻を陥落させる

彼の想い

「コルネリア、これで少しは分かりましたか?」

 ぐったりと寝台に横たわる愛おしい人に、リシャールは声をかける。コルネリアはなにも答えず、ただ規則正しく寝息を立てている。
 リシャールはコルネリアの寝顔を頬杖をついて眺めた。

 最初は、姉のように慕っていたはずだった。恋心を自覚したのは、ずいぶん後になってからだ。そして、いつまで経っても変わらない弟扱いに絶望したのも、同じ時期だった。
 その関係を打破すべく、リシャールはピエムスタ共和国に遊学に行ったのだ。すべては、愛しいコルネリアと比肩するため。そのために、リシャールは3年も我慢したのだ。

 コルネリアの身体中にはリシャールの独占欲の強さを物語るように、白い体に赤い華が散っている。ひとつひとつリシャールが丁寧につけたものだ。
 結局、会えなかった3年の月日の空白部分を一気にうめるように、一晩かけてリシャールはコルネリアを抱きつぶし、あの手この手で「もう離縁を申し込まない」と何度も約束させた。

「しかし、最初に出会った日の約束が有効だったとは。俺をなだめるための単なるデタラメだと思っていたのに」

 リシャールは端正な顔をしかめる。

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