四月のきみが笑うから。
移動教室、昼休み、放課後の清掃活動、すべてにおいてわたしは独りだった。
独りでいることが寂しくて嫌なのではなく、"独りでいる人"という見方を周りの人からされるのが嫌なのだ。
"可哀想な人"という肩書きを理不尽につけられることが耐えられない。
ねえ見て、ハブかれてる。
うわあ、まじ乙じゃん。
どうせ陰で言われている。事実でしかないから、さらに惨めで消えたくなる。
被害妄想が自分でもとどめられないほどに膨らんでいく。
ホームルームが終わり、ぞろぞろと人が退散し出した頃。
「木月」
ふいに出入り口付近で引き止められる。
振り返ると、ちょいちょいと手招きをする担任がいた。
早く帰りたいのにと不満を募らせながら近寄ると、「木月」ともう一度わたしを呼んだ彼は、積み上がった資料集の上にポンと手を乗せた。
「悪いがこれ、資料室に持っていってくれないか。木月は確か帰宅部だっただろう」
「え、はい…… 一応、そうです……けど」
「じゃあ頼めるか。学級委員の山根も岡崎も、部活があって無理らしくてな。本当、木月がいてくれて助かったよ」
問答無用。わたしの意思などまるで関係ない。
わたしの返事を聞く前に、半ば強引に仕事を押し付けた担任は、「じゃあよろしくな」と大して気持ちのこもっていない挨拶をして足早に教室を出ていった。
残ったのは、勢いに呑まれたわたしだけ。
電車の時間に間に合うだろうかと、そんな不安が頭をかすめる。けれど、こうして無駄に悩んでいる時間さえもったいなくて、苛立ちを堪えながら抱えるように資料集を持ち上げた。
鞄を肩にかけたままなので、その重さといったら半端じゃない。か弱い女子認定されていないことは分かっているけれど、せめて少しくらいは気遣ってほしかった。
身体の構造上、男の子とは圧倒的に持っている力が違うのだから。
「重た……」
二回に分けて運ぶのは面倒だからと一気に持ってきてしまったけれど、横着せずに分けていればよかったかもしれない。
重すぎて腕がちぎれそうだ。