四月のきみが笑うから。
春茜

 うつむきがちに、歩を進める。
 駅までの道を、ぽつり、ぽつりと。


 たしか入学してからはしばらくは、こんな感じで歩いていた。

 前を向くことが、つらくて。たったそれだけのことでもものすごく体力と気力を使うから、こうして下を向いているのがいちばん楽だった。


 すっかり元に戻ってしまったみたいだ。

 色のない日々がわたしの日常。もともとこれがわたしにとっての"普通"なのだから。


 先輩と過ごした束の間の幸せは、わたしが死ぬまでのちょっとした休息だったのかもしれない。そんなふうに、馬鹿げたことを思うようになっていた。


 だから、もう悔いはないのかもしれない。

 このまま先輩と会うことがなければ、学校に通う意味も、生きる意味すらも分からなくなってしまう。


「……重すぎる」


 自分が思っている以上に、わたしはメンヘラ気質なのかもしれない。

 そんなことを思いながら、雨で散ってしまった桜の木を見上げる。

 それからゆっくりと地面に視線を落とすと、花びらが桜色の絨毯のように広がっていた。
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