腹黒王子の甘い寵愛。
拳を握りしめた。爪が食い込んで、血が出そうになる。

瑠奈……絶対にいいなんて言わないよな?


そんなヤツ、君には釣り合わない。


ジーッと瑠奈を見つめながら念を送っていると、パチリと視線が合った。

するとうるうるとした瞳で、まるで「どうしたらいいの?」と言わんばかりに助けを求められる。


ああ……そんなら可愛い顔したらだめじゃないか、僕以外の前で……。


無心と人をすり抜けて彼女に近づいていく。


「……申し訳ないが桜井は諦めてくれ」


間に入って、男に向かってそう言った。


「なっ……お、王子っ……」

「さ、朔くん……!?」


瑠奈が朔くんと言うと共に、周りがざわめき出す。

馴れ馴れしく名前で呼ばれたくないため、読んだら嫌われるだなんて噂を流させたからだろう。


瑠奈が名前呼びをして、きっと全員が驚いている。そして、軽く震え始めた。


「おい、ヤバいんじゃないか……?」

「いくら天使の瑠奈様とはいえ、名前呼びはさすがに……」


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