冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない。


「真人、今度仕置きが必要だね」

「ええっ、そんな、酷すぎます」


お互いに冗談だと分かっているから、軽めに交わせるその会話。

ぐったりと横たわった今のおれじゃあ、あやちゃんに会いにはいけないから。


十分に体力を回復した後に、もう1度リベンジするくらいなら、優しいあやちゃんは許してくれるかな……。



「……おれって、ずいぶんと粘着質な男だったんだな」


しみじみと呟いたその言葉に、「今更ですか?」と生意気な真人がそう被せる。



「……けれど、飛鳥馬様に執念深く愛される七瀬様は、幸せ者ですね」

「そうかな……。そうだと良いな」


「はい。私が断定いたします」


こいつがおれの側近で良かった───。

そう思えた、瞬間だった。

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