冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない。


 ♦


腹部の傷が癒えてきた頃。


もうすっかり夏休みに入ってしまった。


一応、わたしは明日から文化祭の準備に携われることになっている。



「お父さんまでわざわざ見舞いに来てくれてありがとう」

「はは、彩夏に会いたくなったからね」


物腰柔らかに笑いながら、お父さんはわたしに食べさせるためのみかんを剝いてくれている。



「彩夏は明日から学校かい?」

「…うん、そうだよ」

「きっとみんな明るく迎えてくれるよ」

「…だね」


お父さんと話している間も、ある人のことが気になって仕方がない。


今日も、本当は麗仁くんがわたしに会いにこの病院に来ていたらしい。

看護師さんが教えてくれた。

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