極上御曹司と最愛花嫁の幸せな結婚~余命0年の君を、生涯愛し抜く~


目を開けると、ひときわ白く無機質な天井が見えた。

いつの間にか酸素マスクが外れていて、呼吸が楽になっている。頭もはっきりして、以前より視界が明るく色鮮やかに見えた。

「星奈!」

声とともに母が飛んでくる。

「お母、さん」

喉を使うのが久しぶりで掠れた声しか出ない。だが、なんとか謝罪の言葉を口にできた。

「ごめんなさい」

「謝るのは私の方よ。こんなつらい思いを何度もさせて……」

そう言って涙をにじませる母に、私はゆっくりと首を横に振る。

「今までずっと、看病、大変だったでしょう?」

子どもの頃から心配ばかりかけていた。母の人生の中十五年くらいは、私の看病しかしてなかっただろう。

「なに、言ってるの……」

その通りだったのか一瞬動揺を見せた母だけれど、次の瞬間、毅然とした声で言い放った。

「生きてさえいてくれればいいの」

感極まって言い募る母に、私はぱちりと目を瞬かせる。

< 217 / 267 >

この作品をシェア

pagetop