冷酷と悪名高い野獣は可憐な花に恋をした



冷たい・・・?


・・・これは、由々しき事態だ



「あの・・・」


「エイトだ」


「エイト?」


「あぁ、名前」


「永久のエイに飛ぶ」


「永飛、さん」


「“さん”は要らねぇ」


「でもっ」どこからどう見ても年上だろう


いや、実は二百歳とか、フフ


「でももへちまもねぇ」


「へちま、ですか」


例えがおかしな人、いや人外


「エイトって言い難い、です、よ?」


「好きに呼んでも良いが“さん”は認めねぇ」


「永飛、えいと、エイト・・・
ん、八だ・・・はち、はっち、あ!!」


「ん?決まったか?」


「ハッチ」


「・・・・・・犬みたいだな」


「じゃあ“永飛さん”で」


「んんんんんんんんんんんっ」


唸るように悶えた永飛さんは
諦めたように「ハッチでいい」と頭の上に置いた顎に力を入れた


「イタタタタタ、重いですハッチ」


「痛くしてんだよ」


「暴力はんたーい」


「クッ、花恋は面白いな」


「・・・?」


「俺を知らない?」


「・・・?ハァ」


「反応薄っ」


・・・もしかして、有名なのだろうか


鯨を食べる人外、とか


「花恋は何年?」


「四月から三年生です」


「じゃあ一年は被ってるだろ」


「え、ハッチって此処の学生だったんですか?」


「行事とかで見かけたこともないか?」


「あの、私、行事に出たことないので」


「は?」


ここでようやく頭の上に置かれた顎が外れた

そして至近距離で視線が絡んだ途端


「花恋また顔が真っ赤だぞ
やっぱ熱でもあんじゃないのか?」


おかしなことを言い始めた
いやいやいやいやいやいやいや


「どう考えてもハッチの所為ですよね」


「え、俺?」


「イケメンで距離感がバグっているとか
私じゃなければ餌になっていたはずですよ」


「おいおい、今の突っ込みどころ満載だったな」


「どのあたりがですか?」


首を傾げてみたところでおかしなことを言った覚えはない


「一番は“餌”」


「だって」


「だって?」


言っても良いのだろうか


「あぁ、言ってみろ」


「その前に」


「ん?なんだ?」


「約束してください。私を食べないって」


「ブッ、クッ、分かった、花恋は食べない」


「じゃあ言いますよ?」


「あぁ、早く言え」


「ハッチは人外でしょう?」


「・・・」


規格外イケメンが鳩豆顔で固まった










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