冷酷と悪名高い野獣は可憐な花に恋をした
Dクラス
AM6:30
鳴り始めたアラームを手探りで止める
「さて」
後ろ髪を引かれる思いで、温もりが残るベッドから起き上がり、そのままの勢いでカーテンを開けた
「今日も晴れ」
サッと身支度を整え、洗顔と歯磨きを済ませると食堂へ向かった
「おはようございます」
「「おはよ〜」」
「「おはようございます」」
いつもの顔ぶれに挨拶を済ませて少し大きめのテーブルのいつもの席に腰掛ける
「花恋ちゃんおはよう」
「おはようございます間宮さん」
絶妙なタイミングで運ばれてきた朝食に手を合わせた
「いただきます」
「は〜い、召し上がれ〜」
[東白学園学生寮]
此処は特待生専用の学生寮
元々は昭和の初めに建てられた職員寮があった場所で、耐震基準を満たしていないとかで取り壊されて以降は更地だった
その場所に私が入学する直前に完成したのが東白学園学生寮
正真正銘、学生寮なんだけど
絵本に出てくるような赤い三角屋根が特徴の可愛い建物は白い壁と周囲を囲む芝生のお庭とのコントラストが素敵
流石にキッチンまでは無いけれど。コンパクトなバストイレ付きの贅沢極まりない個室と住み込み寮母の間宮さんが作ってくれる食事は絶品
ランドリールームは共用ではあるものの洗濯機と乾燥機が六機ずつ備えられているから
空いているものを使うというよりは其々が決まったものを使っている
毎年、各学年成績優秀者上位五名に与えられる特待生制度
学費免除に始まり学用品の支給、定期考査前の補習制度に学生食堂チケット等
数え上げればキリがないほど兎に角手厚い
三学年で十五名いる特待生の内
学生寮に入っているのは私を含めて五名の女子生徒
三年生は私を含めて三人で
二年生二人を合わせた五人は仲が良い
今年の新一年生は残念ながら入寮希望者は居なかった
毎年長期休暇には其々が家族の元へ帰るけれど
私は入学以降、この寮を出たことはない