【シナリオ版】セーラー服を脱ぐ前に〜脅迫されて 溺愛されて〜

第六話

○リビング(深夜)

真紘「公子さん、こんなところで寝ると風邪ひきますよ」

酔っ払ってソファーで眠る公子をゆさぶる真紘。

公子「うーん」

うなって狭いソファーのなかで、寝返りを打ち、ゆっくりと目を開ける公子。
アルコールがまわっているため、公子の目はとろんとしている。

公子「あ、真紘さんだぁ。お帰りなさぁい」

呂律がうまく回らず舌ったらずになっている公子は、真紘と目が合ってふにゃりと柔らかく笑う。
今まで見たことのない公子の可愛らしい表情にドキッとする真紘。

真紘「自分がなに飲んだか、わかっていますか?」

ゆっくり体を起こして目をこすりあくびをする公子は、いつものようなトゲトゲした空気がなくぽやんとしている。

公子「この間の、シャンパン飲みました。おいしかったし、早く飲まないと、悪くなると思って」

真紘「やっぱり……同じブランドのものですが、こっちはアルコールが入っているんですよ」

ため息をつく真紘に、目をまん丸くする公子。

公子「お酒らったんれすか?」

可愛らしい公子の姿に、頬を染める真紘。

公子「私、捕まっちゃいます?」

上目遣いに公子は真紘を見る。

真紘「『二十歳未満ノ者ノ飲酒ノ禁止ニ関スル法律』に違反していますが、これに本人を処罰する規定はありません」

頬を染めながら、愛らしい姿を正視出来ずに目を逸らす真紘。

真紘「初犯ですし、勘違いからくる事故のようですからね。僕には監督責任がありますが、後の祭りですし……」

正視出来ないものの、ちらりと公子に視線を送る真紘。

真紘「再発防止策を検討しましょう」

公子の隣に座る真紘。

真紘「ワインセラーを購入して、アルコールの含まれるものはそちらで保管するようにします。公子さんは、ラベルを隅々まで確認して、アルコールの表記がないか確認してくださいね」

公子「ふぁい」

真面目な真紘に、公子はあくびまじりに返事をする。

真紘「真面目に聞いてください」

あくびまじりの返事をしてくる公子を真紘は叱るが、可愛らしい仕草に頬は緩んでいる。

真紘「とにかく、今はお水を飲んで寝て、酔いを醒ましてください」

公子「え〜」

真紘がキッチンへ水を汲みに行くが、公子はソファーでだだをこねている。

公子「論文、読んでる途中なの! もう少しで読み終わるから、読んでから寝るの!」

戻ってきた真紘にグラスを手渡され、素直に水を飲むが寝ることは拒否する公子。

真紘「受験も終わったことですし、少しのんびりしてはいかがです?」

再び公子の隣に腰掛け、顔を覗き込む真紘。

公子「真紘さん、合格がゴールだと、思ってるくちでふか? 合格は、スタートですよ。なんなら、まだスタートもきってないくらいでふよ」

グラスから口を離し、公子は真紘を睨む。
顔が赤くて、その目つきも険がない。

真紘「じゃあ、本当のスタートはどこなんです?」

問う真紘に、得意げな顔をする公子。

公子「官僚に、採用されることです。文部科学省を目指してましたが、こども家庭庁という選択肢も、出てきましたね」

真紘「子どもと関わる省庁が良いんですか?」

公子の祖父から官僚を目指している話は聞いていた真紘だが、具体的な省庁の話は初めてで少し驚いている。

公子「はい。親が亡くなって、苦労しました。とはいえ、私はかなり、恵まれています。父の実家が、尋常じゃない太さですから」

祖父に引き取られてからの生活を思い、ころころと笑う公子。

公子「もしもお祖父様が、いなかったらと思うと、怖いです。こんな風に、夢を見ることもできなかったと思います。だから、どんな人が、どんな境遇でも、夢を描いて邁進していける。そんな環境を整えたいでふ」

割としっかり話していたがやっぱり酔っている公子に微笑み、酔ってるからこそ嘘偽りない言葉だと感じ、自然と真紘は公子の髪にふれていた。

真紘「公子さんは立派ですね。尊敬致します」

そっと公子の髪に口付けをする真紘。

公子「そして、ゆくゆくは政界へ――」

真紘「勇ましいですね」

そこまでの野心があったとは知らず、目を丸くする真紘。

公子「だから、寝ません。勉強、します」

意気込む公子はこぶしを握りしめている。

真紘「ダメです。しっかり休むのも大切ですよ」

真紘の言葉に、公子は唇をとがらせる。

真紘「かわいい顔してもダメです」
「じゃあ、こうしましょう。絵本代わりに僕が論文読んであげますから、公子さんは布団に入っていてください」

立ち上がり、公子に両手を向ける真紘。
公子はその手を握りしめて、立ち上がった。

○寝室(深夜)

天蓋付きベッドに横になる公子。
部屋の照明は落とされ、サイドチェストのランプだけが光っている。
その前に椅子が置かれ、サイドチェストに公子の部屋にあった専門書と辞書が置かれている。

真紘「三つ目の論文が読みかけなんですね。聞いてて良いですから、ちゃんと目をつぶってくださいね」

公子を布団に寝かせて、布団をかけてあげる真紘。
公子は口元まで布団に潜り込んでいる。

公子「真紘さん。わがまま言って、ごめんなさい。やっぱりいいです。大人しく寝ますから」

殊勝な公子の態度に、さらりと公子の頭を撫でる真紘。

公子「代わりに、私が眠るまで……手をにぎっててもらってもいいですか?」

布団の中から、手を出してくる公子。

公子「こわい夢を見たら、いつもパパとママにやってもらってたの」

真紘「怖い夢を、見るんですか?」

公子の手に自分の手を重ねながら真紘が聞くと、公子はこくんと頷いた。

真紘「いいですよ。眠るまで、側にいます」

ぎゅっと公子の手を握りしめる真紘。

公子「一緒に、お布団も入ってくれる?」

真紘「それは――」

握りしめた真紘の手に顔を寄せながら、上目遣いでおねだりする公子。
絶句する真紘。

真紘「何もしないでいられる自信がないので……」

公子「だめなの?」

公子はうるんだ目で真紘を見上げている。

○寝室(朝)

公子(すごく――幸せな夢を見た気がする)

まどろむ公子がゆっくりと目を開ける。
眠い目をこすっていると、公子は反対側の手が誰かに握りしめられていることに気がつく。
公子が隣を見ると、真紘が眠っている。
眼鏡は外しているが服はワイシャツのままで、胸元がはだけている。
公子が起きた気配に真紘も身じろぎ、ゆっくりと目を開けて公子を見る。
真紘は公子の手を顔に近づけると、寝転がったままちゅっと公子の手の甲にキスをする。

真紘「おはようございます、公子さん」

驚いて飛び起きる公子。
急に動いたせいで頭痛を感じて、動きが止まる。
こめかみを押さえる公子に、起き上がった真紘は、以前ピントが合うといった距離まで顔を近づける。

真紘「体調はいかがですか?」

至近距離で微笑まれ、公子は思わず平手をお見舞いしそうになるが真紘につかまれ阻止される。

真紘「二日酔いを心配してましたが、酷くはなさそうですね」

公子「二日酔い……?」

不思議そうにする公子。

真紘「おや、記憶にないですか? 昨夜はあんなに楽しい時間を過ごしたのに……大変、可愛らしかったです」

ぽっと頬を染めて視線を逸らす真紘に、公子は思わず自分の着衣を確認する。

公子「私になにしたんですか!?」

真紘「人聞きが悪いですね。誘ってきたのは公子さんの方なのに」

心外だと、傷ついた顔をする真紘。

公子「あり得ないです!」

手を振り払い布団を出て行こうとする公子を真紘が後ろから抱きしめ、引き止める。

公子「今度はむしるって言いましたよね!」

真紘「はい、どうぞ。ご自由になさってください」

公子に頭を差し出すように、公子の肩に頭を寄せる。

真紘「公子さんは僕の髪を自由にむしる。代わりに僕は公子さんと自由にスキンシップが取れる。そういう契約です」

公子「違います!」

真紘「公子さんにさわれるなら、髪の毛なんて安いものですよ」

公子の首筋にキスをする真紘。

真紘「二十歳になったら、一緒にお酒を呑みましょうね」

拘束されて真っ赤になる公子。
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