ギター弾きの天使とデュエットを 両想いのその後 甘々番外編
「実は今回、福岡に行ったあとに少し足を延ばして長崎まで行ってきたんですよ。チャコが修学旅行で行ったことがあるから任せろなんて言ってたんですけど、結局何にも覚えていなくて。くくっ、なぜか私が案内する側になってました」
「もう! 恥ずかしいから言わないでよ!」


 千夜子のその姿がありありと想像できて思わず笑ってしまった。この子は昔から気の向くままに突っ走る。


「千夜子はそのときの勢いで進むから、そういうのは向いてないだろうな」
「もう、お父さんまで……」
「でも、チャコのその勢いが思いもよらぬ出会いを持ってくるんですよね。チャコが行ってみたいっていう方向に行くと不思議と面白いお店が見つかったりするんですよ。ははっ」


 自分もそうだったなと微笑ましい気持ちになる。千夜子もそうだが、自分の妻もそうだった。よく振り回されたものだ。


「ばかにしてるでしょ……」
「してないから。チャコといると楽しいって言ってるんだよ」


 せっかく微笑ましい気持ちでいたのに、懸念していたそれが始まってしまった。悠輝が甘い空気を出して、千夜子に触れはじめたのだ。かわいい娘の様子を微笑ましく見ていたはずなのに、今は複雑な想いでいっぱいだ。悠輝は優しく千夜子の頭を撫でている。娘を愛してくれるのは嬉しいが、目の前でラブシーンを広げないでほしい。


「本当?」
「本当。毎日楽しいし、どんどん好きになる」


 千夜子までもが甘い顔で見つめだした。結婚したばかりのころの千夜子はこういうのを恥ずかしがっていたのに、今ではすっかり彼にほだされて、平気で受け入れてしまうようになった。父はそんな娘の姿を見ていたくなくて、わざとらしく咳をすると、話に割って入った。

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