darkness

掴みとれ



久しぶりに制服に触れた。


こんな朝は
ちょうど1年前にもあったような気がする。


母を亡くし綾子おばさんのマンションに移り住む時、私はずっと不登校だった中学へ行くことを決めた。





私が屋上から飛び降りた事件からもう3ヶ月が過ぎた。


学校は私が現れることでどんな顔を見せるだろう。


先生たちは?周りは?
佳代、千春、ユキ、ナギサは?


絵里は?






想像がつかなくて少し怖くなった。






「あさ美ちゃん。陸くんが迎えに来てくれてるわよ。」

ノックして部屋の扉を開けたおばさんが言った。


『え…陸が?』



一緒に行くなんて約束もしてないのに

玄関には眠そうな顔をした陸が立っていた。


前の家と違い、おばさんの家は陸の家から少し距離がある。

わざわざ迎えに来る方が遠くなるのに

陸はきっと
不安な私の気持ちを分かってくれている。







照れくさくて、ありがとうを言えない代わりに笑っておはようを言った。



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