浅蘇芳─asakisuo─
第一章 『あかりを見つけた』





~森高朝都《もりたか あさと》~

 生まれて初めて着るスーツで参加した大学の入学式、外は生憎の大雨で、式辞を読む学長が何を言っているのかよく聞き取れない。

 それくらい雨脚が強く、俺は遠く離れた後方の椅子に座って、小鳥のような学長をただぼーっと見ていた。

 本日はこんな天候ですが、これからの学生生活……的なことでも言ってるんかな。きっと、真剣に聞かなくて良い系の話であろう。

 早く終わったら良いのにって思っている学生が、わんさかいそうである。

 そのうちの一人、自分も欠伸を噛み殺しながら、もにょもにょ言葉を発す学長を黙って見ていた。



< 2 / 597 >

この作品をシェア

pagetop