じれ恋
ホテル住まいとはいえ、組の仕事をしにお嬢の住む家には定期的に行っていた。


当然、家の中ですれ違うこともある。


ホテルの部屋に呼んだ時のあの一瞬でも思ったが、久しぶりに見たお嬢は明らかにやつれていた。


「・・・お嬢、痩せましたよね。ちゃんと飯食べてますか?」


すれ違い際に腕を掴んで呼び止める。


やはり、掴んだ手首は俺なら片手で優に2本は掴めそうなくらい細かった。


「・・・触んないで」


お嬢は俺の方を見向きもせず、冷たく言い放った。


「・・・すみません」


もはや何に対する謝罪なのかは自分でも分からない。


ただ一つ、お嬢との関係がもう修復できそうにないことだけは確かだった。


当然だ。


それだけのことをしたのだから。


でも、これで良かったのだ。


そのために、あんな芝居を打った。


それからしばらくして、俺は自分がお嬢の傍にいなかったことを心底後悔することとなる。
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