じれ恋



というわけで私たちは今、山梨県のとある温泉宿に来ている。


富士山の麓にあるこの宿は、それぞれ名前のついた離れがいくつかあって、お客さんはそこに泊まる。


他のお客さんとあまり接触したくない人や複数人の宿泊にピッタリなのだ。


特にうちは大所帯だから、ホテルを何部屋も取るよりこうして貸し切ってしまった方がお得なのだ。


窓から見える富士山麓の自然や居間の囲炉裏、そして何より庭にある檜風呂が最高だ。


夕食の時間までは各々好きに過ごしていた。


部屋でのんびり過ごす人もいれば、近くを散策しに行った人もいて。


私も外に行こうか迷ったけれど、せっかくの慰安旅行なのに私が動くと紺炉が休めなくなってしまうから部屋に残ることにした。


「愛華少しいいか?」


「おじいちゃん?どうしたの?」


私はおじいちゃんとちゃぶ台を挟んで向かい合うように座った。
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