じれ恋
「今回のお嬢の縁談、どうか考え直してもらえないでしょうか!」


紺炉は畳に手をついて頭を下げた。


ん?私の縁談が、なんて?


「また急にどうした。そもそも、お前が愛華の背中を押したんじゃなかったのか?」


私は何がなんだか分からず混乱しているのに、おじいちゃんは全く動じていなかった。


「それは……はい。でも俺思い出したんです、お嬢との約束を……」


そう言って紺炉は私の方に近づいてくる。


座布団に座っている私の横に来て、まるで絵本に出て来る王子様のように片膝を立てた。


「お嬢、俺のお嫁さんになってください。その時が来たら俺から言うって約束しましたもんね」


一瞬聞き間違いかと思ったけれど、今確かに聞こえた。


「お嫁さんになって」と。


紺炉は確かにそう言った。


紺炉の言った〝約束〟は、多分小さい頃に私が紺炉に〝お嫁さんにして〟と言ったあの話のことだ。


——ちゃんと覚えててくれたんだ……。


私の答えなんて、もうとっくに決まっている。


「これからは世話係としてでなく、お嬢のことを大切に思う1人の男としてそばにいさせてください。もちろん、然るべき順番は必ず守ります」


今度はおじいちゃんに向かって土下座する紺炉の隣で私も頭を下げた。


今回の縁談の時もおじいちゃんは私の意思を尊重してくれた。


だから、どうかお願い・・・!
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