可愛いわたしの幼なじみ〜再会した彼は、見た目に反して一途で甘い〜

第7話

○夏祭りの日(夕方、辺りはまだ明るい)
祭り会場のすぐ近く、待ち合わせ場所の広場。

そわそわして一樹を待つ実里。
夏祭り会場のすぐ近くということもあり、
広場には自分と同じように誰かを待っている人たちの姿や、
すでにお祭り気分笑い合っている人たちがいてにぎやか。

実里(うわー、ついに来ちゃった)
辺りを見渡して、
  (人が多い場所は苦手だけど、夏祭りの雰囲気は好きだな)
  (家族連れとか、カップルも多いな――・・・)

  (・・・って、私たちはカップルじゃないけど!!)
一人で赤くなり、一人でツッコミを入れる実里。
再び辺りを見回して、
  (あ、そっか。そうだよね・・・浴衣着てる女の人もたくさん。
   みんな華やかで可愛い。
   これから好きな人に会うのかな)

  (私はさすがに着る勇気も出ず・・・)
  (でも、久しぶりにヘアアレンジがんばった)

普段はシンプルにストレートヘアの実里だが、
今日は普段は縛らない髪をアップにしている。

実里(へっ変じゃないよね!?)
慌ててコンパクトミラーで確認する。
  (ほっ・・・。よし、大丈夫)

実里(そういえば、私服で会うのはじめてだ)
  (いっくん、どんな感じだろう)

  (・・・どきどきする)

ピロン♪
スマホを確認すると、
一樹からのメッセー胃が届いていた。
『みさと、もう着いた?
俺、噴水の近く』


ぱっと顔を上げ、広場のちょうど中心近く、噴水の方を見る実里。
実里「・・・っ」
一樹の姿を確認。一樹も実里を探しているようだった。

一樹の立っている場所だけ輝いているような錯覚を覚える実里。

黒のパンツに白いTシャツというシンプルな格好だが、洗練されていて
一樹の立っている場所だけ空気が違って見えた。

実際に、近くにいる女子たち数人がキャーキャー言いながら一樹の方をチラチラ見ているのが目に入る。

実里(もしかしなくても・・・)
  「いっくん、格好いい」
  (どうしよう。こんな私を待ってくれてる)

実里に気づく。
一樹「みさとっ!」
実里に向かって片手をあげ華やかに微笑む。
実里(うっ・・・)
  (なんてまぶしい笑顔)
  「ごめん、待った?」
一樹「ううん、全然」
そう言いながら実里の髪の毛、くるっとした横髪に触れる。

実里は普段はしない髪型――後ろに髪の毛を束ねているが、
少しくせのある実里のサイドの髪の毛は後ろに束ねきれず、
横に垂らしている。

実里「・・・っ!?」
驚いて真っ赤になりながら固まるみさと。
一樹「みさと、いつもと髪型ちがう。
・・・かわいい」
実里「・・・っありがとう」
うつむきながらなんとかお礼を言う。
実里(出かける前に、時間かけてよかった・・・)

一樹「ふ(優しい表情で微笑む)、
   行こっか」
実里「うん」

一樹「ほら」
ごく当たり前のように手を差し出す一樹。
実里「・・・」
ためらいながら、そして照れながら一樹の手を取る実里。

実里(なんか、手をつなぐのが当たり前みたいになってるけど・・・。
   いっくんの中ではこれもごく普通のコミュニケーションなのかな)

○場所を移動、夏祭り会場にて(辺りは暗くなり始めている)
色とりどりの様々な出店に、夏らしい陽気な音楽が会場で流れている。
どこからか太鼓の打ち鳴らす音が聞こえる。
会場に張り巡らされた提灯にはぽうっと明かりが灯っている。

一樹「意外と人多いなー・・・」
人にぶつからないように実里を自分の方に引き寄せる一樹。

一樹「なんか食う?」
実里「うっ、うん!」

一樹「おっ、たこ焼きだ」

実里(なんか、私女の子扱いされてるみたい――・・・)

これまでなかった扱いを受け、いっくんにとっては普通のことなんだと思いながらも、
やっぱり内心ではうれしいとも感じる実里。

そして改めて、いっくんと一緒に屋台の間を歩いている事実に感動をかみしめる実里。

実里(うれしい。私今、いっくんとお祭りに来てる)
  (このお祭り、実はいっくんといつか行きたいと思ってたんだ)

*回想
実里モノローグ
毎年初夏に催される、規模はそこまで大きくない地元のお祭り。
一樹と別れたあと家族で一度行った――。
学校(小学校)で辛いことがあって毎日部屋に引きこもるようになっていた私に
お母さんが連れ出してくれた。

これから夏が来るって言う時期の、みんなの浮かれた雰囲気が伝わってきて、
道行く人の装いも身軽で華やかで私もいつの間にか楽しい気分になってたんだよね。
出店とか、見たことがないものがたくさん売ってて・・・。
まるで、いっくんとよく遊んでたお姫様ごっこの世界みたいだった。

それが忘れられなくて・・・。
いっくんと一緒に行けたらって、何度も思い描いてたっけ――・・・

*回想終わり

実里:思わず笑みがこぼれる。
一樹:それに気づき
  「・・・みさと楽しそう」
実里(みっ見られてた・・・!)
赤くなりながら慌てて顔を隠す実里。
一樹「何で隠すんだよ。みさとが楽しそうなの、俺もうれしいし」

一樹が当たり前のように、自分が今どう思っているのか伝えてくれることに嬉しいような、
恥ずかしいような気持ちを感じつつ、
実里「・・・あっそうだ!このあと花火上がるんだって!
   だから、買ったもの食べながら見るのとか、どうかな?」
遠慮がちに一樹を見る。
一樹「(にっこりと優しい顔で)さんせー」

○場所を移動、人気のない神社、境内(日はすっかりと落ち、辺りは薄暗い)
祭り会場のすぐ近くに誰もいない神社を発見した。
ふたり並んで境内へと続く、石階段に腰掛けている。
横には食べかけのたこ焼き。

花火が見える場所を探して偶然この神社を見つけた二人。
思いがけず、花火の絶好の観覧スポットだった。

ドーン!!

花火の打ち上げられる音が響く。

実里(・・・きれい)
しばらくの間、お互いに一言も発さずにただぼうっと花火を眺めていた。
実里(花火ってこんなにきれいだったっけ。
それとも、隣にいっくんがいるから?)
ちらっと一樹の横顔をのぞき見る実里。

実里(いっくん、きれいだなぁ・・・。男の子なのに)
思わずその横顔に見とれてしまう。
  (今更だけど、いっくんの髪色、すごくきれいだ・・・。
   最初は怖いって思ったけど、いっくんの雰囲気によく似合ってる)
   (今は・・・花火に照らされてキラキラと光ってるみたい)

実里の視線に気がつき、
一樹「な~に~?今見てただろ」
からかうような表情の一樹。
一樹の目が優しく細められる。

実里「ううんっ、なんでもない!」
  (すみません、、本当は見とれてました・・・)
慌てて話題をそらす実里。
  「こ、このお祭り、前に家族と来たことあったんだけどね、
   いっくんと来たらどんな感じかなっていつも思ってたから」
  「・・・一緒に来られてうれしいなって」
思わず口をついて言ってしまう実里。
顔が赤くなる。

一樹「ふーん・・・」
実里「なっなに?」
一樹「いーや?
   俺も実里と来られてうれしい」
そう言って両手で顔を覆う。
一樹「・・・やばい。にやける」

一樹「(それからつぶやくように)・・・花火なんて見たのいつぶりだろ」
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