ヤンキーくんは意外に甘い

2話

○街中/昼
丈「今日からあんたは俺の彼女な」
花梨「ええっ!?」
丈「あんたが言ったんだからな。約束守れよ」

【私の言い間違いから】【なぜかクラスのヤンキー不動くんと付き合うことになってしまったらしい…】

(ほんとにどうしよう…)
花梨が凹んでいると、丈は右手に持ったクレープを食べ始める
花梨「そういえば、それってまさか、マルリンのクレープ?」
丈「ああ、そうだけど」
花梨「そのお店探してたの!」
丈「ここのクレープうまいよな」
そう言いながら丈は自分のクレープを食べ進める。ごくりと喉をならす花梨
(う、うらやましい!)
花梨「そのお店どこにあるか教えてほしいな…」
丈「もちろん。ついて来いよ」
花梨「う、うん!」
丈が歩き出し、追いかける花梨

○街中/クレープ屋の前
お店に到着して感動する花梨。さっそく行列に並ぶ二人。並んでいる人にメニューが配られる。種類が豊富なメニューに感動
花梨「やっと会えた、夢のクレープだあ…」
丈「なににすんの?」
花梨「……悩むけど……ストロベリークリームかなあ」
丈「並んでるし、俺がまとめて買うからあっちの公園で待ってろ」
花梨「え……ありがとう!」

【不動くん、顔は怖いけど意外と優しいんだなぁ…】

○公園
ベンチに座って丈を待つ花梨。少しして丈が両手にクレープを持って来てくれた
花梨「…不動くん二つ目?」
丈「ああ。せっかく来たなら食べたくなるだろ。こっち、花梨の」

【そんなに好きなんだクレープ…】【ていうかいきなり名前呼び捨て……!?】

花梨「あ、ありがとう、いくら?」
丈「いらない」
花梨「え、そんな悪いよ! バイトしてるしちゃんとお金はあるよ」
丈「彼氏なら奢って当たり前だろ。それよりはやく食べるぞ」
花梨「う、うん……!」
(勘違いされたままだけど、今はまずクレープ!)
花梨の隣に座る丈。距離の近さにドギマギしながらもクレープをひとくち食べる花梨
花梨「ん! すっごくおいしい……!」
丈「だよな。甘さがちょうどよくて一つでかいのにぺろっと食べれるんだよな」
花梨「クレープ屋さんよく来るの?」
丈「……たまに」
丈は恥ずかしそうにうつむく
花梨「本当に好きなんだね、クレープ」
丈「クレープっていうより、甘いもの全般好きだ」
花梨「……私も!」
仲間を見つけてうれしい花梨は自然と笑顔になる
丈「……あ、花梨、クリームついてる」
花梨「え、ほんと? どこ?」
丈「ここ」
丈の顔が近づき、口の端をぺろりと舐められる
花梨「……っ!!」
丈「うん、うまい」
丈は平然としている。顔を真っ赤にして口をぱくぱくする花梨
(わ、私の、ファーストキス(?)だったのに……!)
丈「ん? どうした?」
花梨「な、なんでもない!」
自棄になってクレープを食べ進め、いっきに食べ終えてしまう花梨
花梨「そうだ、忘れないうちに!」
花梨ははたと気づき、小さめのノートを取り出しクレープについてメモを書き始める
丈「何書いてるんだ?」
ノートを覗き込む丈
花梨「えっと、お店の味とかレシピのメモ!」
丈「なんでそんなの書くんだよ」
花梨「私、将来の夢がカフェをやることなの。今からいろいろ研究しておきたくて…!」
ノートにはメモがびっしりと書かれてある。
丈「そんな夢があるのか……」
丈は感心し、考え込む
丈「……花梨、これからうち来ないか」
花梨「え!?」
丈「来いよ」
(いきなり家って、まさか、恋人として、とか!?)
花梨「いや、そんな! まだはやいというかなんというか!」
花梨は顔を赤くして慌て始める
丈「なに妄想してんだよ。ほら行くぞ」
立ち上がった丈は花梨の手首を掴み、強引に歩き進める。花梨は連れられるまま歩くしかなかった。
花梨「ちょ、ちょっと待って不動くん!」

○カフェ(プティ・アマンチ)/店の前
丈「ついた」
平然とする丈の横で息を切らしている花梨
花梨「え、ここって……」

【不動くんが連れてきてくれたのはお家ではなくて――】

花梨「ここ、SNSで人気のレトロカフェ……!!」

【喫茶店『プティ・アマンチ』】【そのレトロな雰囲気も可愛いし、メニューも豊富で見た目も可愛く、SNSや雑誌で大人気の喫茶店】【もちろんそれだけではなく、老舗だからか味も最高らしい】【私も一度は来てみたかったけど……】

店の前には若い女性の大行列ができていた。男は一人もいない
花梨「さすがにすごい行列……」
丈は黙ったまま店のドアを開け、中に入っていく
花梨「え、並んでるけど入っちゃうの!? だめだよ!」
掴まれている手首を引っ張り丈をとめようとするが、びくともしない
丈の母「あ、おかえり丈」
トレイを持った女性店員が丈に声をかける
丈「ここ、ウチだから」
花梨「ええっ!?」

【憧れの喫茶店が】【不動くんの家――?】
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