お飾り王妃は華麗に退場いたします~クズな夫は捨てて自由になっても構いませんよね?~【極上の大逆転シリーズ】
 鳩の姿でいるのを、これほど幸いだと思ったことはなかった。もし、本来の自分の姿で聞いていたなら、きっと今頃真っ赤になっているだろう。

 オリヴィアの口から、素直な言葉が出るのはそれほどに珍しかった。

 この国に来てからずっと、自分で自分の心を縛り付けていたのだろう。そのオリヴィアの努力を、グレゴールは踏みつけにし続けてきたわけだ。

(……つぶすか)

 愛しいオリヴィアのために、この国をつぶしてしまおうか。

 ここ数年の間、ルークだって、手をこまねいていたわけではない。海賊討伐に始まり、治水工事、新しい鉱山の開発と身を粉にして働いてきた。

 押し寄せる縁談だけは断り続けてきたけれど、ルークのその努力を家族も認めてくれた。

(……オリヴィアを帝国に連れて帰っても問題はない)

 その下準備は出来上がっているが、今の状況で、オリヴィアがあの国を離れる決意をするとは思えない。彼女はそういう人だ。

(……さて、どうするか)

 うっとりとオリヴィアの手の中で羽根を休めながら考える。

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