お飾り王妃は華麗に退場いたします~クズな夫は捨てて自由になっても構いませんよね?~【極上の大逆転シリーズ】
第二章 望まれなかった花嫁の婚姻
次に家族に会えるのはいつになるのだろう。そう思いながら別れを告げる。

 オリヴィアに与えられた期間はさほど長くなかった。いや、あまりにも短すぎた。

 通達があってから一週間後の出発。

 普通王族の嫁入りともなれば、一年ほどの準備期間を設けるものだ。だが、オリヴィアにはそんな余裕は与えられなかった。

 大急ぎで、母の花嫁衣裳を仕立て直す。持参金については、王都から直接国境まで運ばれることになったそうだ。国境で王の使者達と合流するという計画だ。

「それでは――行ってきます」

「気を付けて。元気で過ごすんだよ」

「はい、お父様」

 父からの餞別の言葉は、あまりにも短かった。その横で、母がハンカチを目に当てている。

 母は、ルークとの結婚を喜んでくれていた。こんな形でオリヴィアが嫁ぐことになるなんて考えてもいなかったようだ。

 言葉にしないのは、母もまた王家の出身だから。熱烈な恋愛結婚で嫁いだ自分が例外であることは心得ているらしい。その分、政略結婚を強いられている娘が不憫でならない様子だ。

「お前ならできる。しっかりやるんだぞ」

「任せて、お兄様」

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