くちづけ 〜You look good wearing my future〜
丁度、小さな公園を横切っているところだったのだが、もう日も暮れてきたこともあってか、周りには誰も居ない。

「そうだ。唯は一人で少し先まで歩いてよ」

「なんで?」

「ラストシーンあるじゃん?あれ、なかなか難しそうだから、ちょっと練習しないと、ぶっつけ本番じゃ、とても無理そうだし」

嗚呼…抱き上げられて、くるくる回りながらのキスシーンか。

何だかやる気満々の倫也は、ベンチに二人のカバンを置くと、

「じゃあ、僕が名前を呼んだら、立ち止まって振り向いてね」

渋々、歩き出してしばらくすると、

「唯!」

もうこれまでに数え切れないほど聞いた、私を呼ぶ声に振り返る。

振り返ると、すぐ目の前まで来た倫也は、軽々と私を抱き上げた。
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