龍騎士殿下の恋人役〜その甘さ、本当に必要ですか?
プロローグ〜落ちていた竜騎士を拾ったら


「……あれ?」

その日の朝、水くみのために家の外に出たら…。

男性とドラゴンが、家の前の巨木に引っ掛かる形で落ちていた。

男性は20歳くらいの若さで、長い白銀色の髪を後ろで束ね、革製の簡易的な防具を身に着けている。独特な手袋と装備から、おそらく竜騎士かな?とあたりをつけた。
ドラゴンは10メートル近い大型で何本も立派な角を持つからには、高位のドラゴンだろう。白銀色の鱗を持ち、主人を護るように大きな体でくるんでいる。
ふたりとも、触れれば呼吸も脈もある。

(この地を護るおばあさまの結界を抜けたんだ…なら、悪い人じゃないよね)

「……よし!」

あたしは水くみよりも先に、彼らを助けることにした。



いつも通り昼過ぎに起きたおばあさまが、ベッドで眠る男性と横たわるドラゴンを見て予想通りの言葉を放った。

「……ったく、アリシア。アンタはすぐまたこんなものを拾ってきて」

ちなみに、おばあさまは年齢不詳だ。一応60は過ぎているらしいけど、どこから見てもまだ20代にしか見えない。すらりと高い背に引き締まった見事な肢体。焼けた肌に合った赤い髪を結い上げて、切れ長の青い瞳はすごく綺麗。羨ましいくらいに美人なんだよね。

「いいでしょ、別に。あたしの責任で面倒見るから」
「そう言って、いつもアタシの世話になるじゃないか」
「うっ…で、でも!今度こそ自分でやるから!…なに、その目は?信用してないでしょ?」
「あたりまえだっての。アンタはすぐアタシに頼ろうとするからね。ほら、元いた場所に戻してきなさい」
「捨て犬みたいに言わないでよ!一応、人間とドラゴンなんだから!……って言うか、いつも言ってるんだけど。素っ裸で歩き回るのやめてくれない!?」
「別にアタシの勝手だろ?アタシの家なんだから文句言われる筋合いはないね」
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