龍騎士殿下の恋人役〜その甘さ、本当に必要ですか?
「確かに…キルシェちゃんに初めて会った時には、ヴァイスさんにそっくりだと思いました」
「そうでしょうね。誰からもそう言われます……メローネからさえも。“あなたにそっくりでしょう”……と。何度言われたか」
「え……」
“メローネからでさえ言われます”
そして次のひと言は、今までの、どんな言葉よりも衝撃的な告白だった。
「もし……キルシェが私とメローネの子どもだとしたら、あなたはどうしますか?アリシア」
一瞬、頭が真っ白になって、呼吸さえ、忘れた。
キルシェちゃんが、メローネさんと……ヴァイスさんの子ども……?
幼なじみとはいえ、兄の妻と通じて子どもを……作った?
事実ならば、不倫だ。
オマケに子どもまで……。
ぞわっと全身に鳥肌が立つ。
ふしだら、不埒、不潔。いろんな言葉が頭を巡る。
だけど……。
あたしは、震える拳をぐぐっと握りしめる。爪が手のひらに食い込むまで。その痛みを感じて、ゆっくりと深呼吸をする。
速まっていた鼓動が落ち着き、鳥肌も立たなくなった。
ふう、ともう一度大きく息を吐く。緊張で凝り固まりかけた自分の心と身体を溶かすように。
そして、ヴァイスさんの目をまっすぐに見てきっぱりと答えた。
「あたしは、その話を信じません」