龍騎士殿下の恋人役〜その甘さ、本当に必要ですか?
胸に左手を当て、右手をあたしに差し伸べてくる。
「アリシア、私と踊っていただけますか?」
「は、はい」
彼の手を取ると、立ち上がった彼の左手があたしの背中をぐいっと抱き寄せる。ホールドの姿勢は身体が密着するから仕方ないけど、いちいち心臓がうるさくて爆発しそうだ。彼のたくましい胸板や引き締まった腹筋やぬくもり…澄んだ水のような薫り。すべてがいちいち刺激になって顔に熱を集める。
(うわぁ…あたし、汗くさくないかな?流してはきたけど…髪、ボサボサで服も適当なのに)
まさかこんな事になるなんて思いもよらないから、シャツとショートパンツなんて楽さ優先の格好なんですが。きちんと外出できそうなファッションのヴァイスさんとは雲泥の差だ。
リズムをとったヴァイスさんの合図で、ピアノの前に座ったメグの指が鍵盤を滑らかに叩き出した。
(あ……この曲……)
スウッ、と滑るように滑らかにヴァイスさんが動き出す。
あたしの身体もそれに合わせて勝手に動き出した。
(ここで右足を前に出して……前進は大きめに、それから、リバースターン!)
くるり、とヴァイスさんとともに左回りで回ると、わあっ!とリリアナさん達から歓声が上がった。
(やっぱり…!これ、おばあさまに徹底的に教え込まれたダンスだ)
「やはり君は最高ですね、アリシア」
ヴァイスさんがすぐ目の前で微笑みながらそう言うから、単純なあたしは嬉しくなってすぐに調子づいてしまう。
幼少期からおばあさまと何百回と踊ってきたダンスだから、間違えようもなかった。