龍騎士殿下の恋人役〜その甘さ、本当に必要ですか?
乙女たち2

「え、キルシェちゃんが帰ってないんですか!?」 

メグさんからとんでもない話を聴いた。メローネさんはキルシェちゃんを置いたまま自分だけ帰ってしまったらしい。キルシェちゃんが残りたがったからだ、ということらしいけど。

「アリシアおねえちゃん!」

ラウンジに走り込んできたキルシェちゃんは、一番にあたしの胸に飛び込んできた。

「キルシェ殿下ではございませんの!?お母様のメローネ妃殿下は…?」
「なんか、帰っちゃったみたい」
「あり得ませんわ!」

ただでさえ令嬢方にメローネさんの評価はだだ下がりだったのに、娘を置き去りにしたことで印象は最悪になったようだ。

「仮に重要なご予定があったとしても、伴を付けずに子どもを残すなどあり得ませんわ!まして、キルシェ殿下は次世代の女王陛下になられるべき御身ですのに!」

侯爵令嬢のリリアナさんが一番憤慨してたけど、確かに妙だ。いくら急いでいたとしても、娘をなんの護衛も侍女も付けず預けるなんて……そりゃあ、アプリコット城はヴァイスさん付きの侍女や侍従、警護の兵などたくさんいるけど。それとこれとは話が別。

そもそも、メローネさんは今日ほとんど伴を連れずに訪問してきたんだから。
その時からなにか引っかかってた。

「お姉ちゃんたちがい~っぱい!ね、遊ぼう!!」

キルシェちゃんはあたしの膝の上で、嬉しそうに笑う。その満面の笑顔を見た令嬢方は……やっぱり、スルーは無理だったようで。

「……仕方ございませんわね。王女殿下の望むままに振る舞うのも臣下の務めですわ」

リリアナさんがサラリと髪をかき上げると、マリナさんとカリンさんも「そうですわね」と同意した。

< 181 / 267 >

この作品をシェア

pagetop