龍騎士殿下の恋人役〜その甘さ、本当に必要ですか?

「……あなた……そんなことは…」

メローネさんはすがるような目を向けたけど、王太子殿下は首を横に振ったあと、あたしへ視線を向けた。

「アリシアさん、でしたね」
「は、はい」

両手を胸の前で組んだ王太子殿下は、フッと優しい表情になる。そして、その理由は次の言葉でよくわかった。

「ヴァイスから、よく話を聴いていますよ。最近あいつの話はあなたの事ばかり…それも、すごく楽しそうなので…ようやく、昔のことを吹っ切れたようです。あなたには感謝しています」
「そ、そんな……あたしは別になにも」
「でしょうね…けれども、無意識のうちにあなたは弟を救ってくださった…お会いすればわかります。あなたの目には力と光がある。だから、ヴァイスはあなたに惹かれたのでしょう」

王太子殿下の語られた話は、にわかには信じられない。ヴァイスさんが惹かれただとか…なんの話だろう?
でも……

ヴァイスさんが王太子殿下にあたしの話をしょっちゅうしてくださってる。そして、救われた…。それが真実ならば、涙が出そうなくらいに嬉しい。

「あなたにならば、ヴァイスは昔の話をしているでしょう」
「はい」

王太子殿下に確認されて嘘を答えるわけにはいかないから、素直に頷いた

「では、ぼくとヴァイスとメローネの関係も…」
「……はい」

ヴァイスさんが信頼して話してくださったのだから、あたしはそれを無駄にしないためにも王太子殿下をまっすぐに見た。

「ですが、それを理由にメローネさんがヴァイスさんを頼りすぎるのは違うと思います…メローネさんは王太子殿下を選ばれたのですから」

失礼だし、差し出がましい口を利いている自覚はある。でも、だからこそあたしはメローネさんに言いたかった。

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