龍騎士殿下の恋人役〜その甘さ、本当に必要ですか?
騎乗訓練




「ふあああ…」

まだ薄暗い午前4時。
いつもと同じ起床時間だから、なんの苦もなく起きられた。
寝藁ベッドは特に問題ない。4月だから慣れれば厩舎の馬房もなかなか快適だね。

「おはよう、バーミリオン」
《おいおい、こんな環境に馴染むなよ…》

顔を洗うために井戸へ水を汲みに行くと、木の上に留まったバーミリオンに呆れた顔をされてしまった。

「なんで?あたしは別になんにも困ってないけど」
《だあー!年頃の娘が、寝ワラつけて平気でいるなよ!だいたい、おまえの部屋が宿舎からなくなったのは、アイツらの嫌がらせだろ!?》
「んー、そうだとしても、別に。野宿に比べたら雨風しのげるし、寝床もある。ドラゴンや馬も近くにいるし、あたしには最高なんだけど」

あたしが素直に自分の気持ちを告げても、バーミリオンはまだ不満げだ。

《だからなー!おまえはもっと怒れよ。あのやわ男に恋人扱いされてるせいで、めちゃくちゃ嫌がらせ受けてるじゃねえか!せっかく夢だった竜騎士の候補生っつうのに、授業もマトモに受けれず下働き。不遇過ぎるんだろ!》
「……それは仕方ないよ。だって、ヴァイスさんは王子殿下だったんだから…あたしには不相応だったってこと」

それは当然の事だから、受け入れるしかなかった。

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