龍騎士殿下の恋人役〜その甘さ、本当に必要ですか?
メローネ

「このバカ者どもが!ドラゴンを舐めるんじゃない!!」

主任教官であるバルド卿の怒声が、屋外訓練場いっぱいに響き渡った。

今日の訓練で問題を起こした候補生が一列に並んで叱責を受けている最中。
暴走騒ぎを起こしたリリアナさんはもちろん、ヤークを粗雑に扱ったハワードや、逆に怖がりすぎて落とされてばかりだった人など。

バルド卿は公爵でありながら第一線で活躍したもと竜騎士。一番龍騎士に近いと言われていたけど、再起不能の大怪我で引退し、後進を育てるため自ら志願して教官となった変わり者だ。

今はたしか40をいくつか過ぎてるけど、常日頃から鍛錬を欠かさないからまだ現役と言われても遜色ないほど逞しい身体。身長も高いし筋肉隆々。歴戦の猛者の証である傷だらけの顔は迫力満点だ。髪と同じ赤い口ひげも赤い目も猛者らしく見える。

「で、でも。バルド卿……所詮ドラゴン程度ですよ?命がけで主人であるボクの命令を聴くのは当たり前じゃないですか?」

よせばいいのに、ハワードは弱々しく反論する。自分勝手な彼の言葉だけど、何人かうんうん、と賛同しているのが見えた。

これには、バルド卿も更に怒りが増したようで、ますます眉間のシワが深くなり、目付きがきつくなる。



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